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窓を雨が叩く音で目を覚ました。
もう朝は過ぎて昼になろうとしているのに部屋の中は薄暗く私の気持ちまで暗くなった。
こんな日はあの日のことを思い出す。
寝過ぎたことと寝起きで重くベッドに沈んでいた体をゆっくりと起こしていく。
「雅城……」
もう3年以上経っているのに、忘れたくても忘れられないあの日。
私の……19回目の誕生日。
彼、雅城が出て行った日だ。
洗面所で顔を洗っているとTシャツの襟元からネックレスが零れた。
顔を拭くとネックレスについている指輪を手のひらにのせて見つめる。
19歳の誕生日に雅城がプレゼントしてくれた指輪だ。
「雅城、今どこにいるの?私……」
ずっとあの日のことが忘れられない。
『梨音、今までありがとな……』
『え?何急にー』
『いや、なんとなくさ!愛してるよ梨音!!』
『なんか別れの言葉みたいじゃん!もー、やめてよね』
雅城との最後の会話を思い出すとより気分が重くなる。
「なんで私を置いていっちゃうのよ……」
ぎゅっと強く指輪を握りしめて俯く。
雅城がどうして、どこにいったのか……2年間ずっと探していたけど何もわからなかった。
生きているのかだってわからない。
心配で、不安で怖くて……悲しくて。
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