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昼少し前から降りだした雨は午後になると強くなった。 「すぐに止むかと思ったけど、 これだと花見は無理だな」 彼が窓の外を眺め独り言のように呟いた。 「今年は何処か違うところに行こうって言ったのにな。 結局行けなくてごめん」 「ううん…レンと見るなら何処でもいい」 微笑むとそっと抱き寄せられる。 彼が呟いた。 「俺、 雨男なのかな。 去年もそうだった」 「……」 その胸に寄りかかりながら、 去年の事を思い起こしてみる。 あの雨の日、 初めて男の人に自分の全てを見せた。 彼は優しく宝物のように大事に扱ってくれた。 ―愛してる。 ずっと大切にする。
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