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「そういえば、 沙羅っていう名前はどうしてついた?」 彼の胸に身体を預けていると不意に尋ねられた。 「言った事なかった?」 「うん。 知らない」 名前の事を話すのは少し胸がきゅっとなる。 「…両親が考えてたのは、 本当は桜っていうのだけど。 でも、 すぐに散っちゃう花の名前は縁起が良くないからおばあちゃんが反対したって」 「…さくら」 反芻するように彼は呟いた。 「だから、 少し変えて今の名前にしたみたい。 お母さんの字をもらってつけたの」 「そっか。 お母さんは沙和子さん、 だったかな」 産まれてから何日も経たずにいなくなってしまった母。 写真でしか知らず、 会ってみたくてももう会えない。
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