3人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし実を言うと、小、中学校と友達を作らず一人で過ごしてきた僕は、そんな朝倉の強引さがどこか心地よかった。それまでも、僕に話しかけてくるクラスメイトは少なからずいたが、僕のつまらない返しに失望し、友人関係を築くに至らなかった(僕の方から声をかける、なんてこともしなかったし)。
そんな朝倉との昔の出会いを回想している僕の横で、彼はテレビのリモコン片手にザッピングをしていた。
「この時間、ニュースばっか。つまんねー」
確かにどのチャンネルに切り替えても、アナウンサーが真面目な顔でニュースを読み上げているか、可愛く着飾ったお天気お姉さんが天気の移り変わりについて解説をしているか、そのどちらかだった。
僕は窓の外を見た。今日は朝から雨。僕も駅から傘を差して歩いた。だから朝倉がここにいることも何となく予想がついた。彼は、雨の日にしかやってこない。
ちなみに天気予報によれば、今晩は、雨に加え雷の予報。雨は、明日の明け方までには止むらしい。
「朝倉」
「ん?」
「……呑むか」
朝倉がリモコンの手を止め、僕を見る。
「え、何? 宅飲みやるの?」
「ん。たまにはいいかなって……」
「マジ!? やった~!! 飲めるぜ!!」
小躍りする朝倉の横で、僕は財布をズボンのポケットにしまい、立ち上がった。
「何にする?」
「ビール!!」
「ビールね、はいはい。……不味いけどいいの?」
「やっぱ酒といえばビールでしょ!! あ~楽しみだな、どんな味なんだろ~。つーか俺、ついに酔っ払いデビューじゃね!?」
朝倉の台詞には色々突っ込みたくなったが、僕は何も言わずに家を出た。帰宅時よりも雨は強くなっていた。傘を差した僕はコンビニに向かって、ひとり、歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!