雨の日の訪問者

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*** 「なんだこれ……超不味い!! つーか苦すぎだろぉ!!」  僕の予想通り、朝倉はビールの不味さに悶えていた。酒が得意でない僕は、梅酒ソーダをちびちびと啜る。 「だから言ったのに……」 「うっせぇ! だってよぉ、よくCMとかでサラリーマンのおっさんがぷは~ってゴクゴク飲んでるじゃん? あれをさ~やってみたかったんだよぉ」  朝倉のそのささやかな夢はどうにも叶いそうにない。缶ビール半分で、彼の顔は真っ赤に染まっている。 「あんまり飲みすぎないでよ」 「ほえ? なあにがぁ?」  ……こいつはもう駄目だ。 「なぁ~、亜由美元気かよぉ~」 「それ、さっきも聞いたから」  朝倉は缶ビール片手に、へへ、と無邪気な笑顔を見せた。 「だあってさ、俺のことすげー心配して色々相談乗ってくれてたからぁ」 「相談? 朝倉ってばEDで悩んでたの?」 「ばっか!! ちげーよ!!」  僕は笑った。普段冗談なんぞ一切言わない僕だが、今夜だけは酒の力を借りて少しばかり気分がいい。 「亜由美はさぁ~優しいんだよあいつ。見た目チャラいけど、マジいいやつだからさ~幸せになってほしいんだ」 「そんなに大事なら別れなきゃよかったのに」 「うっせ。つーかそもそも亜由美とは付き合ってねぇから」 「え?」  僕の記憶によれば、朝倉と亜由美は、クラス公認のラブラブカップルだったはずだ。 「俺の悩み相談してもらううちに……勝手に付き合ってるって噂が広まって……まぁ、いちいち説明するのもメンドーになったから、じゃあ付き合ってるって設定にしちゃおーぜって話になったんだよーだ」 「ふぅん」  なるほど。そういう経緯だったのか。 「お前はさぁ……どーなのよ?」 「え?」 「だーかーらぁ! 好きなお、ん、な! 教えろって~」  本日二度目のこのくだり。僕はぐいっと梅酒ソーダを喉に流した。 「僕はいーなーいーって何度も言ってるだろ~」  まずい。僕まで呂律が回らなくなってきた。 「出た出た。この大嘘つきが~。小春、お前ホントに健全な男子コーコーセーかよっ!」 「うるさい。今はいいの今は~」  高校生じゃなく大学生だ、という突っ込みをする余裕すら、酔いのせいで奪われてしまう。
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