雨の日の訪問者

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***  翌朝、目を覚ますと、朝倉はいなかった。窓の外は、綺麗に晴れていた。  部屋は散らかったままで、缶やおつまみが床に転がっていた。僕は、部屋の乱雑さには目もくれず、押し入れを開き、高校の卒業アルバムを取り出した。  一番最後の寄せ書きのページを開く。そこには唯一、彼の文章が綴られていた。 『二十歳超えたら、必ず二人で飲もうぜ!! 朝倉』  彼らしい雑な文字、短い文章、そして、熱い心。 「……勝手に死ぬなよ、未練タラ男」  このメッセージを書いた翌日、朝倉はこの世から去った。交通事故で車に撥ねられ、即死だった。その日は雨が降っていて、視界が悪く、運転手は道路を渡る朝倉の姿が見えなかったらしい。
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