海に沈んだ街

1/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

海に沈んだ街

 青い空は、水を(たた)えて揺れていた。その青の中を鯨が泳ぐ。  他にも様々な魚たちが泳いでいる。小さな魚は群れを成す。時折、大きな魚が、逃げまどう群れを襲う。   「あ、見て。食べられたよ」  継ぎ目のある腕をした少女が、空で泳いでいる大きな魚を指さす。  頭の部分にこぶがある、青緑色の体色をした大きな魚。目はくりくりとしていて愛らしい。けれど、その魚は先ほど小さな魚を食べた。光沢のある(しろがね)の群れを執拗に追いかけて。逃げ遅れた数匹を、吸い込むようにぱくりと。 「あの魚たちは死んだんだね。じゃあ、それまでは生きていたんだっ!」 「またかよ」  死という話題に嬉々として話す少女に、少年は呆れがちに返答した。  立ち上がって、きゃっきゃと飛び跳ねて喜ぶ少女。脚元で立ち昇る砂煙。揺らめくたおやかな緑色の髪に、金色の瞳。肘や、膝の位置にある継ぎ目も相まって、どこか非現実的な姿。少年は、頬を朱に染めて見惚れていた。 「Φ(ファイ)、それのどこが嬉しいんだっ?」 「トーヤには分からないよーだっ」  長袖の少年の名はトーヤという名前。腕に継ぎ目のある少女は、Φ(ファイ)という名前、どこか無機質な響き。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!