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海に沈んだ街
青い空は、水を湛えて揺れていた。その青の中を鯨が泳ぐ。
他にも様々な魚たちが泳いでいる。小さな魚は群れを成す。時折、大きな魚が、逃げまどう群れを襲う。
「あ、見て。食べられたよ」
継ぎ目のある腕をした少女が、空で泳いでいる大きな魚を指さす。
頭の部分にこぶがある、青緑色の体色をした大きな魚。目はくりくりとしていて愛らしい。けれど、その魚は先ほど小さな魚を食べた。光沢のある銀の群れを執拗に追いかけて。逃げ遅れた数匹を、吸い込むようにぱくりと。
「あの魚たちは死んだんだね。じゃあ、それまでは生きていたんだっ!」
「またかよ」
死という話題に嬉々として話す少女に、少年は呆れがちに返答した。
立ち上がって、きゃっきゃと飛び跳ねて喜ぶ少女。脚元で立ち昇る砂煙。揺らめくたおやかな緑色の髪に、金色の瞳。肘や、膝の位置にある継ぎ目も相まって、どこか非現実的な姿。少年は、頬を朱に染めて見惚れていた。
「Φ、それのどこが嬉しいんだっ?」
「トーヤには分からないよーだっ」
長袖の少年の名はトーヤという名前。腕に継ぎ目のある少女は、Φという名前、どこか無機質な響き。
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