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あの日のことは思い出そうとしなくても、勝手に脳裏に浮かんでくる。 夏休み前のうだるように暑い日だった。私は緊張なのか暑さなのか分からない汗を大量にかいてしまって、告白されるシチュエーションには全くふさわしくなかったと思う。 『…好きなんだけど、付き合ってほしい』 セミの声がうるさいくらいに響き渡る校庭の隅で、私は頷くのが精一杯だった。 その時の彼の驚いたような、ホッとしたような、喜んでいるような表情。心拍数が一気に上がり、体温も更に上がったような気がした。そんな感覚がしたのは、後にも先にもこの時だけだった。
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