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自分は最低だ、と思う。
自室に帰って電気を点けると、真っ先に目に飛びこんできたのはテーブルに置いてあったマグカップだった。彼女からの、何年前かの誕生日プレゼント。
部屋を見渡すと、彼女との思い出の欠片がそこかしこに溢れていることに気づく。
彼女が好きだと言っていた小説、デートの日に着た服、旅行のガイドブック。カレンダーに記された赤い丸。
日付を指でなぞりながら、思い返す。
自分が告白したのも今日のように暑い夏の日だった。
クラスで最初に仲良くなったのは彼女だった。自分はあまり喋るのが得意ではなかったけれど、彼女とは会話が弾んだ。彼女は感情豊かで、コロコロ変わるその表情にも心を動かされた。
断られるかもしれないなんて考えなかった。いや、少しは思っていたけれど、それよりも伝えたい気持ちの方が遥かに大きかった。
顔を真っ赤にして頷いた彼女の表情が脳裏に浮かぶ。
その瞬間、自分は間違いなく幸せだった。
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