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わたしは少し考えてから答えます。
「ずっとここにいます」
「ずっとって、いつから?」
「ずっとです。物心ついたときには、わたしはここにいました」
「そっか…、あのさ、お願いがあるんだけど」
「何でしょうか?」
「僕がここにいることを、君以外の人には秘密にしてくれる?それでいて、少しの間でいいから…ここにいさせてほしいんだ」
「それは、先生にも言ってはいけないんですか?」
「そう。先生にも言わないでほしい。僕たち二人だけの秘密にしたい」
その言葉にくすぐったさを感じました。
秘密。
人には知られないようにすること。
秘め事ができたのは、センターで過ごしてきた中で初めてのことです。
本当はいけないと分かっていますが、何故だかユウの言う通りにしたい、という気持ちの方が勝ります。だから、わたしはユウのことを誰にも言わない約束をしました。
するとユウがこちらに手を差し出して言いました。
「なら、指切りをしよう」
その言葉にわたしはびっくりして、ユウから後退りました。恐る恐る、ユウに訊きます。
「約束するためには、指を切らないといけないんですか?」
それ聞いたユウはきょとんとしています。
数秒の沈黙の後、ユウは質問の意図を理解したようで、違うよ!と慌てて否定していました。
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