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指切りを知らないわたしに、ユウは自分の両手を使って丁寧に教えてくれました。
「指切りは、本当に指を切るんじゃなくて、こうやってお互いの小指と小指を絡ませて約束を守りますよっていう意思表示することなんだけど…センターでは教えないのか」
最後の方は声が小さくてユウが何を言っているか分かりませんでしたが、初めて知った「指切り」は何だかとても素敵なことのように思えて胸の鼓動が早くなります。
嬉しい気持ちのまま、ユウのことをじっと見つめていると、ユウはこほんと咳払いをした後、わたしと指切りをしてくれました。
「指切り拳万、嘘ついたら針千本呑ます、指切った」
ユウは呪文らしき物騒な言葉を唱えると、絡めていた指を解いて満足げに笑っていました。
「はい!これで約束できた!」
「嘘をついたら針を千本も呑まなくてはいけないのはとても怖いです」
ユウはふっと笑いました。
「約束を破らなければ、針なんて呑まなくて良いんだから大丈夫じゃない?」
この日から、わたしとユウの誰にも秘密な同室生活が始まりました。それは同時に、変わらない今日へ終わりを告げた瞬間でした。
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