ふたかけらめ

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秘密の同居生活が始まった、と言ってもセンターでの生活に劇的な変化はありませんでした。 なぜなら、わたしが部屋に戻る夜の間しか、ユウとは一緒にはいられないためです。 思っていた以上に何らかの変化を期待していたその反面、先生に知られたらどうしようとかと内心ドキドキしていたので、順調に続けられるユウとの生活は拍子抜けです。 ユウも、周囲に自分が潜んでいることはすぐ露見すると思っていたようで「案外上手く隠れられるものなんだな」と驚いています。 「それにしても、思った以上に君は忙しいんだね?」 「忙しいかどうかは分かりませんが、確かにユウと話す時間はあまりとれていません…」 その理由は、センターにいる子どもは決められた時間にしか部屋に戻ることを許されない、という制限にあります。 以前ユウに「センターではどう過ごしているか?」と聞かれた時のことを脳裏に思い出します。 「君や他の子どもはいつもどんな風にここで生活しているの?」 「朝になるとアナウンスで起きて、ご飯を食べてからメンテナンスを受けます。アナウンスはユウも目を覚ました時聞きましたよね?」 「アナウンスってあのけたたましいアラーム音のこと?あれは心臓に悪いよ、寿命が縮むかと思った」 ユウはアナウンスを聞いた時のことを思い出して顔をしかめています。 「確かに。聞き慣れたわたしでもあまり良い目覚めではありません」 高音を三度、長く響くアラーム音はセンターでの一日の始まりの合図でもあります。 その鋭い音には、睡魔も逃げ出してしまいます。 身体に染み込んだ習慣のようで、わたしを含むセンターの子どもたちは、その音を聞くだけで自然と身体を起こし食堂に向かい歩き出します。 「何度耳にしても慣れないよ。ああ、思い出すだけで頭が痛くなってくる」 そういえば、同居生活スタート直後に初めてそれを耳にしたユウは、耳鳴りと頭痛で顔を歪めていました。
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