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「ユウを見つけたのは、裏庭でした。どうしてあんなところで倒れていたのですか?」
わたしに与えられた部屋はセンターの中でも端に位置しています。
センターは真っ白な塀に囲まれた、先生と子どもたちが生活するための場所であり、窓からは空と白い壁が見えるだけです。
子どもの生活する部屋の連なる建物を囲むように中庭と裏庭が存在し、裏庭は先生や子どもから忘れ去られていると言っていいほど、誰も訪れない静かな場所で、木々や植物があるだけで他には何もありません。
その静かさが好きなわたしは、時々本を携えて自由な時間を裏庭で過ごすこともありますが、何故ユウはあの場所にいたのか不思議でした。
わたしの質問に、ユウは言葉では語らず、窓の外に見える塀を指差をさします。
「?」
ユウの言いたいことが分からず、首を傾げます。
そんなわたしを見て笑みを深めていたユウは、唐突に真剣な表情になりました。
先程までの雰囲気とは打って変わり、その姿はとても大人びて見えます。
「僕は、あの壁の向こう側から君を探しに来たんだ。そして、ここがどんな場所なのか知りたかったんだ」
その台詞にわたしは言葉が出せませんでした。
わたしを探しに?どうして?
わたしがユウと初めて会ったのはついこの間のことです。
そもそも、ユウがここに来るまで壁の向こう側にも世界ぎ広がっていただなんて知りませんでした。
いくら考えても答えは出てません。
言葉の意味を理解しようと、わたしがうなりはじめたところで、ぷっと吹き出す音が聞こえます。
「君を探しに来たっていうのは冗談だよ!僕らはあの夜が初対面だろう?」
それでも納得いかない顔をしていたわたしを、ユウはけらけらと笑って一蹴しました。
「ここに何があるのか、確かめたかったのは本当だけどね。まさかここがセンターだったなんて、夢にも思わなかったけれど。実際にお目にかかるまでセンターが実在するなんて信じてなかったから」
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