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「先生、11番はどこに行ったの?」
ある時、食堂でご飯を食べていると、みんなのまとめ役の7番がこんな質問しました。
わたしも、昨日まで見かけていた11番が突然いなくなってしまって、気になっていたのでテーブルを挟んで座る13番との会話を途中でやめて黙ります。
他の子どもたちも似た様なもので、話し声がきこえなくなりました。
きっと、7番の疑問は他の子どもたちにとっても気になっていたことだと思います。
テーブル以外何もない殺風景な食堂は元々ひんやりとしていますが、先生が音もなく腰掛けていた椅子から立ち上がった瞬間、いつも以上に冷え切ったように感じられました。
先ほどまでの賑やかさをどこかへと旅立ち、反対に重苦しい程の静寂が部屋中に訪れています。
7番の質問に先生は答えます。先生の声は単調で何の感情も読み取れません。
「11番は来たる日を迎え、幸せな場所へ行くことを許されました。あなたたちも時がきたら、11番のように幸せな場所に行くことができるでしょう」
「幸せな場所ってどこにあるんですか?」
「時が来たら分かるでしょう」
「いつ幸せな場所に行けますか?」
「時が来たら分かるでしょう」
7番はもう質問はしませんでした。
先生もそれ以上は何も言わず、わたしたちを通してどこか遠くを見てめているようでした。
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