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ふたかけらめ
13番と別れ、わたしは部屋に入りベッドに潜り込みました。
いつもならすぐに睡魔がやってくるはずですが、今日に限って中々眠りにつくことができません。
わたしは眠ることをあきらめて、食堂での出来事を考えることにしました。
11番は幸せな場所に行った、という先生の言葉がやけに頭の中でしこりのように残って、いつまでも消えませんでした。
突然いなくなるのは、11番に始まったことではありません。以前から、一人二人と子どもは忽然と姿を消していました。
そのあといなくなった子どもたちは、誰もセンターには戻ってきていません。
いなくなった子の中には19番もいました。
19番はわたしより歳上の子どもでした。
会話にはいれず一人で本ばかりを読むわたしのことを心配して遊んでくれたのだと思います。
面倒見の良い、心の優しい子でした。
19番がいなくなってすぐ、わたしは淋しくて眠れない夜を過ごしたのを覚えています。
いつ19番に会えるのでしょうか?
いつか、またセンターに帰ってきてくれるのでしょうか?
そんなことばかり考えていました。
ですが19番がセンターからいなくなって10日程経った時、わたしは、19番はきっとどこかで幸せに暮らしているのだと自分を渋々納得させ、待つのを諦めました。
子どもがいなくなり、誰も帰ってこないのは、幸せな場所に行ってしまったからなのでしょうか?
わたしの疑問に答えてくれる相手はこの部屋にいません。
きっと明日も今日とさほど代わり映えのない一日がやってくるのでしょう。
これからも知りたいことへの答えはなくて、山積みになっていくのでしょうか。
一人悶々と考え、寝返りを打ちました。
その時、物音が聞こえました。
どきりとしました。
この部屋にはわたししかいないはずなのに。
静寂の中、息を潜めているとまたガサガサと音がします。
わたしは物音がした方向に視線を向けましたがそこかなさ窓しかありません。
ベッドから起き上がって恐る恐る窓に近づき、外の景色に目を凝らします。
その間にも窓の外からは不規則にガサ、ガサという音が聞こえてきています。
徐々に暗闇に目が慣れてきてた頃。
外の景色の中、漸く、その正体を知ることができました。
闇の中、薄っすらと浮かび上がった正体とは、地面にうずくまる人影でした。
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