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驚いたわたしは先生を呼びに行こうかと思いましたが、わたしの手は呼び鈴ではなく、窓の方へと引き寄せられており無意識に窓の鍵を開けていました。
警戒心よりも好奇心の方が上回ってしまったのです。
自分のとった行動に動揺しつつも、慎重に身体を窓の外へと出していきます。
両足が地面に着くと、想像していた以上に大きな音が生じて驚きましたが、物音ぐらいでは倒れた人影はピクリとも動きません。
足を進めながら、脳裏に先生の顔が浮かびました。
夜に外へ出たことが知られたら、罰としてきっとご飯を2日食べさせてもらえなくなるでしょう。
ですが、そのことには構わず人影へと足を進恐る恐る忍び足で向かいます。
近くまでくると人影はわたしと同じくらいの年齢の子どもであると分かりました。
わたしは、勇気を出して声をかけます。
「もしもし、聞こえますか?」
「…ぅ」
わたしの声に、目の前の子どもが意識を取り戻した様でした。
けれど、返ってきた声音には覇気がありません。
耳を澄まして聞きとった言葉は、今にも消えそうな程弱々しく小さなものでした。
「きみ、は…」
そう言うと意識を飛ばして、子どもは動かなくなりました。
わたしは急いでその子の腕を自分の肩に回し、全身の力を込めて何とか部屋へと運びます。
早くしないと目を覚まさなくなってしまうのではないかと、焦り荒い息を吐いては吸って、一歩ずつ進みます。
それにしてもわたしにこんなに力があるなんて、はじめて知りました。
今日何度目かの驚きです。
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