ふたかけらめ

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なんとか部屋の中まで運びベッドの上に寝かせます。 どこかに怪我をしていないか確認しますが、目立った外傷はありません。 一安心して、ぼさぼさに乱れた髪を整えてあげようと手を伸ばします。 部屋のランプに灯された髪色は、今まで目にしたことのない美しい琥珀色をしていました。 こんなにきれいな髪色は本の中でしか見たことがありません。 わたしは素晴らしい発見をしたような気がして、誰かに教えたい気持ちになりました。 髪を梳かし額に手を触れた瞬間、驚いて手を離しました。 触れたところから伝わった体温は、燃えているように熱かったのです。高熱を出してぐったりしていたのだとはじめて気づきました。 ホッとした時間は束の間に、慌ただしく立ち上がると棚からからタオルを準備し、瓶の中の水をガラス皿の上に移します。 そこへタオルを浸し万遍なく濡らします。 冷えたタオルを絞り小さく折りたたむと、ベッドの上で苦しそうにしているその子の額にあてました。 その後も、タオルで汗を拭いたり部屋に常備されている飲み水を飲ませてあげたりと、出来る限りのことをして、いつのまにか一晩を明かしました。
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