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夜なのにセミの声が聞こえる。
梅雨が明けて、7月の真夏、am24:00。
いつもの自分の部屋ではなく、風のよく通る仏間で扇風機を強にして眠る 佐藤秋 の姿がある。
彼は、8月まで『クーラーを付けずに寝る!』と決めており、そんな変なプライドが邪魔して、熱くて眠れないくせに、寝ようと必死だ。
彼が畳の部屋で寝だしたのは、単に風通しがいいからと言う理由だけではなく、
ベッドで寝ようとすると、行人と過ごした夜のことや、その後に見た嫌な夢を思い出してしまい、気持ちが落ち着かなくなるため、仏壇のある部屋で寝だしたのだ。
きっと彼の中で父親と母親が守ってくれるような気持ちなのだろう。
寝返りを打ちながら、秋は気づいた。
「あ、メールしとらん…」
携帯をリビングに取りに行き、ついでにお茶も飲んだ。
彼の家の冷蔵庫はいつも空に近い。
この中の上段に鎮座する “薬たち” が 『 お前は、オメガ 』だと強く言いつける。
それらの薬とは少し色が違う薬が、紛れて置いてあり、秋はそれを手に取ると奥にやった。
光のない瞳は、空を見つめた。
彼は冷蔵庫を閉めると、その下の冷凍庫を開けてアイス枕を取る。
布団に 横になり、頸にアイス枕を当て血液の冷却を図りながら、ポチポチと携帯のボタンを押した。
『お疲れ様です。本日はバイトがないので、もう寝ます。』
…と行人に送った。
するとすぐに返信が返ってきた。
『お疲れ様です。今日も暑かったですね。しっかり休んで下さいね。』
秋は小さく微笑むと 携帯を枕元に置いた。
(なんか、ホッとする…)
頸のアイス枕が効いて来たのか、ウトウトして来ている。
(今日は水曜だから、あと3日後に会えるか…)
そう思いながら彼はやっと眠りについた。
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