18.両神相い搏ち、合して形と成る 『霊枢』決気篇より(R)

3/20
前へ
/309ページ
次へ
夢の奥に誘われた秋は、寝返りを打つと、 「 ユ キさ ん…」 …と、小さく 男の名を呟いた。 ーーーーーーーー 6月の梅雨の 末期 ヒートの甘い香りに包まれた2人の空間に、雨音が 心を騒つかせるように激しく降り注ぐ。 (まずい、早く薬を…) 俺はユキさんの、瞳を見たら襲われる様な気がして、上から覆い被さる彼の目を見ずに 冷静にお願いをした。 「お願い、どいてくれん?」 額からは汗が溢れ、身体全身が徐々に熱を帯びてくる。 しかも目の前にいるのはアルファの男。 きっと自分が冷静で居られる時間に余裕はない。 すると、彼は俺の願いを素直に聞いてくれて体を離して立ち上がり、俺の元を離れ何処かに行く。 ホッと胸をなでおろし『早く薬を』と、ソファーから体を起こすと 彼がまた急いで近づいて来るではないか。 「ちょっと、ユキさん?」 そして両手で頭が動かない様に固定すると、またキスをして来たのだが 口に水が目一杯に入ってきて、その冷たさに驚いてゴクンと飲んだ。 口を話すと彼は告げた。 「すぐに薬が効いてきます。このままじっとしてて下さい。」 「……くす り?」 (そう言えば、塊みたいなものが喉を通りすぎる感覚があった。) 彼は 俺の横に腰を下ろすと、首元に鼻を擦り寄せる。 「うん、少しずつ匂い減ってるから大丈夫…」 そう言いながら彼は微笑むとギューっと抱き締められた。 「ねえ、もう一回言っていい?」 「何を?」 「 君が欲しい 」 「は?」 もう、この男の行動が掴めない。 “欲しい”ならヒートを抑える薬を何故飲ませる? 聞いたことがあるが、ヒート状態で行う性行はかなり気持ち良いと聞いたことがある。 ドラッグをやりながらするのに匹敵し、中毒になる人もいるそうだ。
/309ページ

最初のコメントを投稿しよう!

784人が本棚に入れています
本棚に追加