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(最近は東京からの来客が多いな)と思いながら、腰を抜かした東先生を 宮崎ガール原田先生に預けて、俺は久しぶりに再会した恭介さんと、ランチをすることとなった。
食事に行ったところは、学校から徒歩10分弱の雑居ビルの5階、学生が来なそうな昼もやっているバール店にした。
店員は恭介さんを見ると、すぐさま奥に案内した。
「恭介さん、来たことあるの?」
「 いや、全く… 」
相変わらず、この人のオーラは桁違いだと思う。
席に座ると恭介さんはサングラスを取った。
「 土産だ 」
そして布で包まれた桐箱を俺に渡す。
「何、これ?」
「 メロンだ 」
「あ、ありがとう…」
こんな高級メロンを息子にお土産で渡すなんて、千尋父さんに教えたら、きっと恭介さん怒られるんだろうな、と思いながら、俺は有難く頂いた。
(アキと食べよう)
店員におすすめランチ聞いて、それを2つ頼んた。
黒いスーツを着ているのに汗ひとつかいていない、(本当にこの人、人間か?)と久しぶりに会って思える。
「恭介さんってさ、汗腺あるの?」
すると、恭介さんの眉が少しピクッとなった。
「 お前も私のことをサイボーグとでも思ってないだろうな 」
「え、なんで?誰かから言われた?」
「 あぁ、あの狐男だ 」
「あー!森さんね!」
そう言いながら、ここに森さんがいたら俺 殴られてるんだろうなと思った。
「 まぁ、ひなたから話は聞いていたが、元気そうだな 」
「お陰様で…」
「 彼とは上手くいっているのか? 」
「ぼちぼち…」
「 彼の記憶の方は? 」
「カラン」とコップの中の氷が音を立てた。
そのコップを俺は口に運ぶ。
「本人も記憶が、所々欠損してるのは気づいてるみたいなんだけど、戻って来てはないね。
たまに、何かを思い出したのか、泣いてる時もある。」
「 そうか… どっちが彼にとって幸せなんだろうな 」
恭介さんは小さくため息を吐くと、彼も水を口に運んだ。
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