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父は原付で往診に行っている途中で交通事故にあった。
人間とはあっけないもので、
父の顔には傷もなく、霊安室で寝ているようにしが見えなかった。
先代の、笑顔の写真を治療院の玄関に飾っている。
治療院に昔から来ている患者さんは深々と頭を下げて、手を合わせて帰るのが恒例な動作になっている。(父に「早く治りますよう」にとお願いしているようである…)
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「こんにちは~トメさん、今日の具合はどげんですか?」
毎週水曜日の11時は福田トメさんの治療の日と決まっている。
トメさんは農家に嫁いだ方で腰椎は右に大きく側弯し、腰を曲げて歩いている。
父が治療する前はもっと曲がっており、だいぶ良くなったそうだ。
でも治療しないと痛くて眠れなくなるんじゃないかと不安みたいで毎週来てくれる。
「う〜ん、いつも通りのごたる。
今日は膝も見てもらえんやろか? 昨日草取り頑張りすぎたばい。」
トメさんは膝をスリスリとさすっている。
もちろんトメさんの膝はO脚に曲がってるわけで。
「よかですよ、そしたら今日は膝も診てみましょう~」
「お願いね~」
まずは仰向きで両手首の脈を見る。
脈拍が異常に早く打ってないか、不正脈が出てないかはもちろん、内臓や経絡の状態まで脈を診て把握する。
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