第4章.君との距離感

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でも内心、智也はさっき以上のショックを受けていた。 やはり祥悟には片想いの相手がいるのだ。軽いノリでその娘のことを話してくれないのは、きっと相手のことをそれだけ大切に思っているからだ。自分が祥悟を想うのと同じように……。 ……どんな子なんだろう。どうして片想い?そういう相手がいるのに、どうして椎杏さんと一夜を共にしたの? 聞きたい言葉が、胸の中に次々に溢れてくる。でもどれも、口に出すことは叶わない。 「なあ、智也」 黙って窓の外の流れる景色を見つめていた祥悟が、こちらを見る。 「何だい?あ、もうすぐ海の見える公園に……」 「もし俺がさ、女の子だったら……おまえ、俺のこと好きになったりする?」 どきっとして、智也は言いかけた言葉を飲み込んだ。言葉の真意が分からなくて、どう答えようか迷っていると 「無理か。おまえ、好きな子いるんだもんな」 そう言って祥悟は苦笑した。 ……え。待って。それって……どういう意味で言ってるの? 期待しちゃいけない。 これは仮定の話だ。 でももし、祥悟が女の子なら。 俺は……。 「祥、君は……」 「俺さ、こんな見てくれじゃん?女に産まれた方が、絶対に得だと思わねえ?」 ……いや。そんなことないよ。祥。君はそのままで。 「男ならさ、智也みたいな外見が良かったし」 祥悟はちぇっと舌打ちすると、 「女だったら、おまえと付き合ってみたいかも。おまえ、優しいし、ちょっとエロいし、彼氏にしたら絶対に楽しいのにさ。残念……」 智也は、何をどう言えばいいのか完全に混乱してしまった。 それは、自分のことをタイプだと言ってくれてるんだろうか。それとも単に、女に生まれたかった願望というだけ? 「祥。君がもし女の子だったら」 「ん?」 「多分、君とは付き合わないと、思うよ」 ……だって、俺はゲイだから。 「…………」 祥悟はしばらく口をつぐみ、無表情でこちらを見ていたが、やがてぷいっと目を逸らして 「だよな。ま、俺、女じゃねーし」 ぼそっと呟いた。 今日は何だか、祥悟との会話が噛み合わない。お互いに、言いたいことが伝えられていない気がする。どうしてこんなにもどかしいんだろう。
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