第5章.甘い試練

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ホテルのロビーに着くと、祥悟に電話した。 「もしもし? 今ロビーに……」 「部屋、5012な」 辺りをはばかるような声でそれだけ言って電話が切れる。智也はエレベーターに向かうとボタンを押した。 ……何だろう。いったいどうして……? 祥悟の気紛れに振り回されるのなんかしょっちゅうだったが、やはり何だか様子がおかしい。こんな思わせぶりな態度は初めてだった。 智也はエレベーターに乗り込むと、いらいらしながら行き先階のボタンを押す。5階に着くまでが、酷く長く感じた。 ドアの前で気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をすると、智也はインターホンのボタンを押した。 ぴんぽーん……っと妙に間の抜けた音がして、少ししてからガチャっとドアが開いた。 「ちょ、待てって。勝手に出るなよ!」 祥悟の焦ったような声が聞こえる。 だが、開いたドアの前に立っていたのは、祥悟ではなかった。 怪訝な顔で首を傾げる少女の顔に、見覚えはない。いや……何処かで見たような気がしたが、恐らくは初対面だ。 「あんた、誰?」 「リサっ。おまえ、勝手なことすんなって言ってんだろ!」 声のした方に目を向けると、真っ赤な顔をした祥悟が、よろけながらこちらに向かって歩いてきた。 「祥……」 智也が呆然として呟くと、祥悟は気だるそうに壁に寄り掛かりながら、首を竦めた。 「早かった、じゃん」 バツの悪そうな祥悟の瞳が揺れている。 「お酒、飲んでるの?」
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