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ホテルのロビーに着くと、祥悟に電話した。
「もしもし? 今ロビーに……」
「部屋、5012な」
辺りをはばかるような声でそれだけ言って電話が切れる。智也はエレベーターに向かうとボタンを押した。
……何だろう。いったいどうして……?
祥悟の気紛れに振り回されるのなんかしょっちゅうだったが、やはり何だか様子がおかしい。こんな思わせぶりな態度は初めてだった。
智也はエレベーターに乗り込むと、いらいらしながら行き先階のボタンを押す。5階に着くまでが、酷く長く感じた。
ドアの前で気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をすると、智也はインターホンのボタンを押した。
ぴんぽーん……っと妙に間の抜けた音がして、少ししてからガチャっとドアが開いた。
「ちょ、待てって。勝手に出るなよ!」
祥悟の焦ったような声が聞こえる。
だが、開いたドアの前に立っていたのは、祥悟ではなかった。
怪訝な顔で首を傾げる少女の顔に、見覚えはない。いや……何処かで見たような気がしたが、恐らくは初対面だ。
「あんた、誰?」
「リサっ。おまえ、勝手なことすんなって言ってんだろ!」
声のした方に目を向けると、真っ赤な顔をした祥悟が、よろけながらこちらに向かって歩いてきた。
「祥……」
智也が呆然として呟くと、祥悟は気だるそうに壁に寄り掛かりながら、首を竦めた。
「早かった、じゃん」
バツの悪そうな祥悟の瞳が揺れている。
「お酒、飲んでるの?」
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