第5章.甘い試練

7/20
前へ
/261ページ
次へ
険悪な雰囲気で睨み合う2人に、祥悟はうっとおしそうに前髪をかきあげ 「なぁ、アリサ。おまえさ、俺にどうして欲しいわけ? おまえのこと、可愛いし嫌いじゃないって言ったけどさ。付き合うとか、俺、ひと言も言ってねえし?」 「あなた、恋人はいないって言ったわ。それに、付き合ってみなきゃ、私のこと好きになるかどうかわからないじゃない」 頬を膨らませ、臆面もなく言い放つアリサの、人形のように整ったあどけない顔を、智也は感心しながら見つめた。 自分より先輩で人気モデルの華奈におばさんと言い放ち、挑むような目をして祥悟を口説く、その自信たっぷりな姿。 彼女に挨拶された時、たしか歳は16だと言っていたはずだ。 ……すごいな、この子。祥悟と付き合って、自分を好きにさせてみせる自信があるのか。 その動じることのない態度が、少し羨ましくもあった。自分は何年傍にいても、祥悟に告白する勇気さえ出ないというのに……。 「おあいにくさまだね、アリサ。俺、歳下は興味ねえの。だいたいいくつだよ、おまえ。まだ高校生じゃねえの?」 「16よ。でも人を好きになるのに、歳は関係ないわ」 「ばーか。ガキが何言ってんだよ。こんな遅くまで遊んでたら、親が心配するっつーの。いいから帰れって」 祥悟は面倒になってきたのか、そっぽを向いてアリサの顔を見ようともしない。 ……このままじゃ、埒が明かないな。 智也はアリサにゆっくりと歩み寄った。 「水無月さん、だったよね? とにかく今日はもう遅いから帰ろう。俺が送っていくよ」 アリサは途端にキッと智也を睨んだ。 「あなたには関係ないでしょ。余計なこと、しないで」 「うん。関係はないけど、一応ここでは1番歳上だからね。事務所の先輩としても、こんな時間に高校生の君を、こんな場所に居させるわけにはいかないんだよ」
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

247人が本棚に入れています
本棚に追加