第5章.甘い試練

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……え……祥? 慌てていったんドアを閉め、チェーンを外す。開けようとしたドアが急に開いて、智也はバランスを崩して前によろけ出た。 「うわっ」 祥悟が目を見開き、慌てて手を伸ばしてくる。 がしっと抱きとめられていた。 「おまえ、なにやってんのさ。いきなり飛び出して、くんな」 両腕で抱きついてきた祥悟が、焦ったような声をあげる。 「……っごめん」 「ばっか。酔ってんのかよ?」 こんな真夜中に、祥悟の声はまったく遠慮がない。智也は体勢を立て直し、慌てて今度は祥悟の身体を引っ張って、中に入ってドアを閉めた。 「しー。声が、大きいよ」 「おまえが突っ込んできたんだし」 たしなめる智也をぎろっと睨みつけると、手を振りほどいて、靴を脱ぐ。そのまま勝手知ったる様子で奥のリビングに入っていく祥悟を、智也は呆然と見送った。 「……え? あ、ちょっと」 リビングのドアから、祥悟が顔を出す。 「なに突っ立ってんのさ。早く来いよな」 智也はわけが分からず、慌ててリビングに向かった。 「祥。君、どうして」 「おまえさ、酷くねえ? 電話、何回かけても無視だし、チャイム鳴らしても居留守だしさ。何なの?それ。何怒ってんのさ」 祥悟はこちらの言葉を無視して、まくし立てている。智也は追いついていけずに、口を半分開いたまま、祥悟の膨れっ面をぼんやりと見つめた。 「聞いてんのかよ? おまえ、まじで酔ってんの?」 祥悟は訝しげな顔になり、とことことこちらに近づいてきた。下からこちらの顔を見上げてきて 「寝惚けてんのかよ?」 「え……っと、あの、いや。祥、君、どうしてここに?」 戸惑いながらようやく問いかけると、祥悟は途端に眉を寄せて 「おまえが、戻って来ねえからじゃん。待ってるって言っただろ?」
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