第5章.甘い試練

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「厄介事、押し付けたって。それでおまえ、怒ってんの?」 「別に、怒ってないよ」 「怒ってんじゃん。電話、無視してさ。おまえ、すげえ怒ってるじゃん」 「そうじゃないよ。祥。電話に出なかったのは悪かった。ごめんね」 なんだか泣きたくなってきた。 こんな真夜中に、言い争いなんかしたくない。 気持ちをコントロールする自信がなかったから、祥悟の顔を見ずに帰ったのに、どうしてわざわざやってきて、心を掻き乱すのだろう。 「謝れって言ってんじゃねーし」 ……頼むよ、祥。これ以上は無理だから。 「文句あるならさ、言えばいいじゃん。おまえが言わなきゃ、わかんねえだろ」 「祥。怒ってないよ、本当だ。ただ、ちょっと疲れてるし眠いんだ。君だって明日は仕事だろう? もう、3時過ぎてる。話なら朝起きてからにしよう」 祥悟はまた押し黙り、無表情でこちらを見ている。智也は無理やり、微笑みを浮かべた。 「もう遅いから、とりあえず泊まっていって。あ。ベッド、今、シーツを取り替えるから」 祥悟はじっとこちらを見つめて、またため息をついた。 「じゃあおまえ、どこに寝んのさ?」 「俺は、ソファーで……」 「ばっかじゃねーの? 俺がソファーで寝ればいいんだし」 「いや。そういうわけにはいかないよ。こんな所で寝たら、君に風邪をひかせてしまう」 祥悟は呆れたように首を竦めた。 「じゃあおまえは風邪、ひかないわけ? まったく……おまえってさ、結構めんどくさいのな」 「え……」 祥悟は何故か、苦笑している。 その突然の表情の変化に智也が戸惑っていると、祥悟はソファーからひょいっと立ち上がり、すたすたとドアに向かった。 「え、祥。どこ、行くの? 帰るのかい?」 智也が慌てて後を追うと、祥悟はくるっと振り返り 「寝室。別に一緒にベッドで寝りゃいいじゃん。おまえんとこのベッド、結構広かったし」 ……?! え……。
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