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祥悟の言葉に、特別な意味なんかない。
でも、彼の口から零れ落ちたそれは、ひどく甘い誘惑の呪文だ。
肩を寄せ合い、彼の体温を感じながら、綺麗な寝顔をすぐ間近で見つめる。それは幸せ過ぎるひとときだが、今の自分にはちょっと酷な状況だろう。
アリサと濃厚な口付けを交わす、祥悟の艶めいた表情が浮かぶ。
あの時ちらっとこちらに向けた、色っぽい流し目。あんなものを見てしまった後で、平然と隣で寝入ってしまえるほど、自分はストイックな男ではない。
彼との付き合いが長くなるほど、秘めた恋情と欲情は日々、強さを増しているのだ。
祥悟のことを想って、眠れない時間を過ごす夜もある。我ながら情けないことだが、あのベッドで祥悟の艶やかな肢体や表情を思い浮かべて……自分でしたことも、ある。
……いやっ。やっぱり無理だ。俺はソファーで寝よう。
智也は危うく妄想に陥りかけて、首を横に振ると、歯ブラシに手を伸ばした。
洗顔を済ませて恐る恐る寝室のドアを開けると、祥悟はすっかりリラックスした様子で、壁際の一人掛けのソファーで雑誌をめくっていた。
「遅いっつーの」
顔もあげずに文句を言う祥悟の手元を見て、智也はハッとした。
ソファーの横のラックに置いてあるのは、どれも祥悟が載っている雑誌だった。智也が密かに買い集めているマル秘コレクションだ。
……うわぁ……。ダメだから!君がそれ、見ちゃ。
智也は内心パニックを起こしながら、ギクシャクと祥悟に近づいた。
祥悟がひょいっと顔をあげる。
「ごめん、遅くなって。祥、それ……」
「これさ、借りちゃったけど?」
そう言われて、祥悟が摘み上げた胸元を見ると、祥悟がナチュラルに身につけているのは、自分が寝間着代わりに着ているTシャツとショートパンツで……。
「え。それ、着たのかい?」
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