第6章.甘美な拷問

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「んー。ダメかよ? だって服のまんまじゃ皺になるしさ」 「や。ダメじゃないけど、それ、俺がもう着ちゃったやつだから。新しいの、出すよ」 あたふたとクローゼットに向かおうとする智也のシャツが、ぐいっと引っ張られる。振り返ると祥悟が首を傾げていて 「おまえ、やじゃねーなら、俺、これでいいし。で、俺、どっちで寝りゃいいのさ?」 「え。どっちって……」 「奥か手前。どっちでもいいなら奥、行くけど?」 「あ、ああ。えっと、君の好きな方で……。じゃなくて、祥」 祥悟は身軽に立ち上がり、雑誌をラックにさすと、とことことベッドに向かう。智也が慌てて呼び止めると、祥悟は振り返った。 「ん? なにさ。やっぱおまえが奥に行く?」 「いや、そうじゃなくて。その、一緒に寝るって、ベッド狭いからやっぱり俺は……」 「なに、おまえ、寝相悪いわけ?」 「いや、そうじゃないけど」 「俺も多分、寝相は悪くないし? ほら、ごちゃごちゃ言ってると朝になっちゃうしさ。早く寝ようぜ?」 祥悟はベッドにあがると、奥の壁側に行ってさっさと横になった。 ……うわぁ……。どうしよう……。 やはりソファーで寝ると言えば、祥悟のご機嫌を損ねそうだ。智也は諦めてカクっと肩を落とし、とぼとぼとベッドに近づいた。布団をめくって、あがろうとすると 「おまえ、そのまんまで寝んの? シャツとジーンズ脱げば?」 じと……っと見上げられて、智也は顔を引き攣らせた。祥悟の言うことはもっともだ。 でも……この状況で下着だけになるなんて……。 ……ああ……もう、どうしたらいいんだろう。これって何のお仕置きなのかな……。 「ほら。早くしろって」 促され、智也は内心ため息をつくと、シャツのボタンに手を伸ばした。
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