第6章.甘美な拷問

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潮が引くように放出の悦楽が去っても、智也の興奮は冷めないままだった。時折ひくつく祥悟の身体をしっかりと抱き締め、乱れた息を整える。 このまま先に進みたい。 もし祥悟が許してくれるのなら、ずっと秘めてきた彼への思いを打ち明けて、心も身体も……ひとつになりたい。 祥悟はもう二十歳だ。 出逢った頃の高校生ではないのだ。 まだまだ、1人前の大人とは言いきれないが、社長の家から出て一人暮らしを始めることの出来る、 つまりは、自分の意思で人生の選択が出来る歳になったのだ。 もし、君が好きだと告げたら、祥悟はどんな反応をするのだろう。 祥悟はゲイではない。 でも……こんな行為をしようと誘うくらいには、自分に心を許してくれているはずだ。 最初は、やはり抵抗があるかもしれない。 でも、祥悟に、マイノリティに対する偏見がないのは、これまでずっと側にいたから知っている。それが自分に向けられることを、彼が許すかどうかは……分からないけれど。 嫌われて側にいられなくなるのが辛すぎて、ずっと打ち明けられずにいた。 でも……この機会を逃したら、またずっと秘めたままの思いを引きずって、彼が他の誰かと親密になっていくのを見守るだけになる。 智也はそっと息を吐き出すと、抱き締める腕の力をゆるめた。 ありったけの勇気を振り絞って、今、祥悟への思いを打ち明ける。 もたれかかっていた祥悟の身体が、自分から離れる。口を開こうとした時、祥悟の身体がゆらっと揺れて、そのまま後ろに倒れそうになった。慌てて、腕を掴んで引き寄せ、顔を覗き込む。 祥悟は、すよすよと寝息をたてていた。 すごく気持ちよさげに、穏やかにほんのりと微笑みを浮かべて。 智也は、開きかけた口を力なく閉じた。 そっと抱き寄せると、祥悟は再び自分にもたれかかり、むにゃむにゃと小さく何か呟いて、またすよすよと寝息をたて始める。 智也は、ぎゅっと目を瞑り、祥悟の身体を優しく抱き締めた。 ※次章は「揺らぐ水面に映る影」です
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