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祥悟は目をまん丸にしたまま、大人しく車から降りる。智也は車を急いでガレージに停めると、急いで祥悟に駆け寄った。
まごまごしていると、門を出て行ってしまうかもしれないと焦ったが、祥悟は興味津々に道の奥に続く庭の方を眺めていた。
「すげぇ……庭っつーより森みたいになってるし」
「そっち、気になるなら後で案内してあげるよ。とにかくまずは家に入って、傷の手当てが先だ」
祥悟は振り返り、夢から覚めたような顔をして、無言で首を竦めた。
家の中に入っても、物珍しげにきょろきょろしている祥悟の手をさりげなく引いて、智也は廊下の突き当たりの自分の部屋へと連れて行った。
今はほとんど使われておらず、自分も年に数回来るだけだが、通いの管理人が月に何度か訪れて掃除をしてくれているから、部屋は綺麗に整頓されていた。
「そこに、座ってて。薬箱取ってくるから」
祥悟を椅子に座らせて部屋を出た。救急箱と洗面器にお湯、タオルも何枚か必要だ。
思いつくものをとりあえず揃えて部屋に戻ると、祥悟は椅子から立ち上がり、部屋の中を歩き回っていた。
「祥。探検は後だよ。ここに座って?」
智也がため息混じりに声をかけると、祥悟は手に取ってしげしげと見つめていた写真たてを棚に戻し、振り返った。
改めて真正面から見ると、祥悟の顔はちょっと酷いことになっていた。血はもう止まって固まっているが、頬が赤黒く腫れ上がっている。
智也が痛々しそうな顔をすると、祥悟はこちらに戻りながら壁際の姿見をひょいっと覗き込み
「うっわ。ひっでー顔」
素っ頓狂な声をあげて笑い出した。
「こら。笑ってる場合じゃないよ」
しぶしぶな様子で、椅子にどかっと腰をおろした祥悟の前に屈み込む。濡らして絞ったタオルで顔にこびり付いた血をそっと拭うと、祥悟は眉を顰め顔を歪めた。
「っぅ……いってぇ……。そこ、痛いっつの」
「痛いのは当たり前だよ。ちょっと我慢して。ああ……これは酷いな。骨が折れてたりしないかい?」
「んー。多分折れてねーし。でもめちゃくちゃ痛てぇ。つかさ、奥の方の歯、ちょっとグラついてるんだけど?」
まるで他人事のように呑気な声を出す祥悟に、智也は深いため息を漏らした。
とりあえず応急処置は出来るが、早めに病院に連れて行かなければ。
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