247人が本棚に入れています
本棚に追加
祥悟はきゅっと首を竦めて
「それは、わっかんね。でもさ、もしそうだとしても、俺の子なはずねーし。俺、あいつとは多分……最後までやってねえもん」
口を尖らせる祥悟に、智也は眉を顰めた。
「……多分?」
智也の聞きとがめに、祥悟はまた叱られた子どものような顔になり
「う……。や、3ヶ月前ぐらいにさ、あいつんとこ、泊まったのは事実。あいつがあんまりしつこく誘ってくるからさ、遊びでいいならって念押して……」
「抱いたの? あの娘、まだ16歳……」
「や。その16の誕生日にさ、独りは寂しいって誘われてさ」
「抱いたの? あの娘を」
「……覚えてねえし。俺、あん時、徹夜続いててさ、途中で意識なくなってたし」
自信なさげな祥悟の声音に、胸の奥がヒヤリと冷たくなった。
智也は思わず身を乗り出し、祥悟の両肩に手を置いて揺すった。
「祥。いくら眠くても、最後まで抱いたかどうかくらいは、分かるよね?」
祥悟はなんとも微妙な顔になり
「ほんと、覚えてねえもん。たださ、多分、途中で寝ちまった……はず……かも」
智也は、くらりと目眩を起こしかけて、慌てて祥悟の肩から手を離した。
ダメだ。ちょっとショックが大き過ぎて……平静を保てそうにない。
先日、祥悟につきまとっていたアリサの、くっきりと整った意志の強そうな顔が浮かぶ。
あの娘の思い込みの激しさと祥悟に対する執着に、危険な印象を抱いてはいたのだ。
祥悟の話を聞く限りでは、本当に妊娠しているのかも分からない。でも、可能性はゼロではないのだ。そしてもしそれが本当なら、16歳の少女に手を出して妊娠させたというのは、この業界じゃなくても大変な事態だった。
最初のコメントを投稿しよう!