第7章.揺らぐ水面に映る影

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祥悟はきゅっと首を竦めて 「それは、わっかんね。でもさ、もしそうだとしても、俺の子なはずねーし。俺、あいつとは多分……最後までやってねえもん」 口を尖らせる祥悟に、智也は眉を顰めた。 「……多分?」 智也の聞きとがめに、祥悟はまた叱られた子どものような顔になり 「う……。や、3ヶ月前ぐらいにさ、あいつんとこ、泊まったのは事実。あいつがあんまりしつこく誘ってくるからさ、遊びでいいならって念押して……」 「抱いたの? あの娘、まだ16歳……」 「や。その16の誕生日にさ、独りは寂しいって誘われてさ」 「抱いたの? あの娘を」 「……覚えてねえし。俺、あん時、徹夜続いててさ、途中で意識なくなってたし」 自信なさげな祥悟の声音に、胸の奥がヒヤリと冷たくなった。 智也は思わず身を乗り出し、祥悟の両肩に手を置いて揺すった。 「祥。いくら眠くても、最後まで抱いたかどうかくらいは、分かるよね?」 祥悟はなんとも微妙な顔になり 「ほんと、覚えてねえもん。たださ、多分、途中で寝ちまった……はず……かも」 智也は、くらりと目眩を起こしかけて、慌てて祥悟の肩から手を離した。 ダメだ。ちょっとショックが大き過ぎて……平静を保てそうにない。 先日、祥悟につきまとっていたアリサの、くっきりと整った意志の強そうな顔が浮かぶ。 あの娘の思い込みの激しさと祥悟に対する執着に、危険な印象を抱いてはいたのだ。 祥悟の話を聞く限りでは、本当に妊娠しているのかも分からない。でも、可能性はゼロではないのだ。そしてもしそれが本当なら、16歳の少女に手を出して妊娠させたというのは、この業界じゃなくても大変な事態だった。
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