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智也が自分の携帯電話を取ってきて差し出すと、祥悟は顔を顰めたまま、じっとそれを見つめていたが、はぁ……っと大きなため息をつくと、しぶしぶ受け取った。
「仕方ねえし。覚悟、決めるか……」
登録されている里沙の電話番号を呼び出し、嫌そうに電話をかけ始めた祥悟のカップを持って、智也は台所に向かった。
同い年の姉の里沙は、祥悟の唯一の弱点だ。他の誰に対しても不遜な態度を変えないが、里沙にだけは頭があがらないらしい。
撮影現場の隅っこで、里沙に説教されて弱りきった顔をしている祥悟を、智也は何度も見かけていた。
……内容が内容だから、きっと彼女の雷が落ちるな……。
祥悟が電話を渋る気持ちは分かる。アリサのことを姉に伝えるのは……相当気が重いだろう。
……俺が説明してあげた方が……よかったかな。
祥悟の紅茶をいれなおしながら、智也は首を傾げた。だがあの内容は、自分から伝えるのもかなり勇気が要る。
「……や。だからさ。怪我治ったらそっち行くから。そん時話すし。……違うっつーの。いや、だからさ……」
案の定、リビングから祥悟の声が聞こえてくるが、いつもの俺様っぷりはどこへやら、弱々しい愚痴めいた様子だった。
……まあ、少しお灸をすえてもらった方がいいのかもしれないな。
祥悟の派手な遊びっぷりは、この業界では結構有名だ。以前から多少のいざこざは起きていたのだ。
祥悟自身、自覚しているのかは分からないが、彼はとにかく女にも男にも歳上にも歳下にもよくモテる。祥悟と同じ遊び慣れた相手なら、ちょっとした火遊び程度で済むが、今回のように相手を間違えると、大火事になる。
前から、そういう危険は感じていたが、なにしろ自分は、その祥悟に女の子との遊び方を教えてしまった悪い大人だ。祥悟に説教など出来る立場ではなかった。そもそも祥悟は、自分の忠告など聞く耳を持たないだろうし。
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