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祥悟と距離を置くつもりなら、他に好きな人を見つけるのが1番いい方法なのかもしれない。
同じ性的指向で、自分を愛してくれる可能性のある誰か。マイノリティだからそう簡単ではないだろうが、そういう目的の人々が集う場所なら知っている。
一途に想い続けているから、こうして煮詰まっていくのかもしれない。もっと視野を広げて、自分の心を見つめ直す為にも、これはきっといい機会なのだ。
「あ。そろそろ……出る頃かな」
ぼんやりと考えていたら、冬の夜風が身にしみてきた。祥悟が風呂から出て、自分を探しているかもしれない。
智也は窓を開けたまま、部屋を後にした。考える時間はこれからたっぷりあるのだ。
案の定「ベッド広いんだしさ、ここで一緒に寝りゃいいじゃん」と祥悟は少しだけごねた。
「他に広い部屋があるのに、わざわざ窮屈な思いをして、2人で寝なくてもいいだろう?」と穏やかに宥めると、祥悟はそれほど食い下がりもせず、ベッドに入って布団を被った。それを見届けてから、智也は客間に向かった。
窓を開けっ放しだったせいで、部屋は冷えきっている。
智也は窓を閉めると、納戸から客布団一式を取り出して、古い木製ベッドの寝具を整えた。
部屋の暖房を入れてから、いったん部屋を出て風呂に入り再び客間に戻ると、風呂上がりの温まった身体で布団の中に潜り込む。
二日酔いで寝不足のまま1日仕事をして、身体は疲れているはずなのに、目を瞑っても簡単には寝つけなかった。
ようやくうとうとし始めた頃、カタンっという物音で目が覚めた。
……あれ……窓……開けたままだったかな……。
目覚める直前、何だか息苦しい夢を見ていた気がする。そんなことを、覚醒しきれない頭でぼんやり考えながら、智也はのろのろと音のした方に目を向けた。
月明かりだけが淡く照らし出す室内に、白い影がぼんやりと浮かび上がる。
「……っ」
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