第8章.硝子越しの想い

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自分にさっきの話をするのは、さぞかし勇気が要っただろう。途中何度か「自分も同じだから気持ちはわかる」と言ってあげたくなった。 でも言えなかったのだ。今まで誰にも打ち明けていない自分の秘密を、自分より年下の瑞希に簡単に告白する勇気はなかった。 智也はちらっと壁の時計を見て 「瑞希くん。君、今日は他に予定があるかい?」 「ううん。何も」 「じゃあちょっと、俺に付き合ってくれる?」 瑞希は手の甲で涙を拭いながら、首を傾げた。 「付き合う? どっか行くの?」 「うん。ちょっとね、約束している相手がいるんだ」 「え。じゃあ僕、お邪魔だよね? 一緒になんて……ここに居させてもらえたら僕……」 途端に眉を下げ尻込みした表情になる瑞希に、智也は微笑むと 「いや。君が一緒に行ってくれた方がいいかもしれない。うん。その方が、いいかな……」 今の自分の不安定な心理状態で、祥悟と2人きりで会うのはダメな気がした。第3者の瑞希がいてくれれば、自分の感情を剥き出しにするような事態はおそらく避けられる。 狡い考えなのは分かっていたが、自分の気持ちをコントロールする自信がない智也には、それが1番いいような気がしたのだ。 ※章の途中ですが、次はSS「猫の気持ち(祥悟視点の挿話)」を更新します。
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