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社長が帰った後で、今度はアリサが乗り込んできた。
祥悟としては、正直、面倒くさかったのだ。アリサの相手をするのは。
だから、勝手にやって来たアリサを何も言わずに追い返してやろうかと思った。
騒ぎになろうが、それで事務所を首になろうが、別に構わなかった。
ただ、智也が自分をすごく心配してくれて、時間を割いて面倒を見てくれた。
あいつに、そんなことをする義理なんてないはずなのに。
それに、夜になれば智也が帰ってくる。
智也は優しい男なのだ。
おそらくは、バカをやって怪我までしてしまった自業自得の自分を気の毒に思って、見捨てられずにいろいろ面倒をみてくれているのだろう。
あいつは、お人好しなくらい優しい男だから。
そういう智也の優しさが、祥悟は嬉しかった。
1日中何もせず、ここにこもっている生活は、最初は退屈だった。
けれど、自分が独りにならないように峰さんに世話を頼み、智也自身も都合のつく限り、ここに来てくれていた。
そういう智也の強制的ではないけれど緩やかな束縛を、いつしか心地よいと感じてきていた。柔らかく包まれて、過度じゃない程度に守られている。
智也に匿われて過ごす、この屋敷での何もない日々は、自分でも意外なくらい居心地がよかった。
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