247人が本棚に入れています
本棚に追加
硝子越しの想い2
祖父の家に着くと、瑞希を伴い玄関の鍵を開ける。彼女の靴はなかった。
智也はそっと深呼吸すると
「あがって」
瑞希を促して自分も靴を履き、リビングに向かった。ドアを開けて覗き込む。
祥悟の姿は……なかった。
……まだ寝てるのかな。
リビングルームに入り、物珍しそうにきょろきょろしている瑞希に振り返って
「瑞希くん。とりあえずそこ、座って。何か飲みたいもの、あるかい? 珈琲、紅茶、ココアならいれられるけど」
「あ……うん。じゃあ紅茶で」
智也は微笑んで頷くと、奥のキッチンにいき、3人分の紅茶をいれた。
「ね、智くん。話してくれた人、いないの?」
「ああ……。うん。まだ寝てるのかな」
「僕、ほんとにお邪魔じゃない?」
ダイニングで椅子にちょこんと腰掛け、居心地悪そうに不安な表情を浮かべる瑞希に、智也はにこっと笑いかけ
「大丈夫。とりあえず買ってきたパンを温めるから、先にこれ飲んでて」
紅茶をトレーに乗せてテーブルに運び、瑞希の前に置くと
「ちょっと、彼を起こしてくるね」
「あ……うん」
智也が瑞希の肩を安心させるようにぽんぽんと叩き、ドアの方へ向かおうとした時、がちゃっとドアが開いた。
入ってきたのは祥悟だった。
シャワーを浴びていたのだろう。まだ濡れている髪の毛をタオルでごしごし拭きながら歩いてくる。こちらに気づいて立ち止まった。
「……来てたのかよ」
微かに目を見張り、こちらをまじまじと見つめた後で、視線をダイニングの瑞希の方に向けた。胡散臭げに眉をひそめ
「誰?あいつ」
智也はちらっと瑞希の方を見て
「あ、俺の親戚なんだ。常葉瑞希くん、」
「ふうん……おまえの、親戚。……あんま似てねーし」
祥悟は智也の言葉を遮るように鼻を鳴らすと、つかつかと瑞希に歩み寄っていく。
瑞希は慌てたように椅子から立ち上がった。童顔な瑞希はその大きな丸い目をこぼれんばかりに見開いて、祥悟を見つめている。その顔は真っ赤だった。
それもそのはずだ。
祥悟は、シャワーを浴びた後はいつもするように、大きめのシャツを1枚引っ掛けただけの姿で現れたのだから。シャツの裾から、すらりとした白い脚が丸見えだ。
初めて祥悟に会う瑞希が、どぎまぎするのも無理はない。
最初のコメントを投稿しよう!