硝子越しの想い2

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「あ、祥」 智也が急いで間に入るより前に、祥悟は瑞希の横の椅子を引っ張り、背もたれを前にして長い脚で座面を跨いで腰をおろすと、瑞希の顔を下から睨めあげた。 「立ってないで座れば?」 「あ、はい、あの、」 瑞希はオタオタしながら、助けを求めるように智也の方をちらっと見た。 「祥、そんな格好していたら風邪をひくよ、着替えて……」 「ひくかよ、風邪なんか。いっつも家ん中じゃこの格好じゃん。それより君さ、歳いくつ?」 まるで獲物を見つけた猫のように、楽しそうに瑞希にちょっかいをかけようとする祥悟を、智也は慌てて制したが、軽くいなされた。 瑞希は戸惑いながらそーっと椅子に座り直すと、祥悟の身体から微妙に目を逸らしつつ 「あの、僕、今年の4月に19になります」 「え。19?見えないなぁ。中学生かと思ったし」 瑞希はちょっと傷ついた顔になり、また智也をじと……っと見た。 祥悟が初めて会う相手に、こんなに興味津々に食いつくのは珍しい。智也はため息をついて2人の間に割って入ると 「祥。君、朝ごはんまだだよね? こないだのベーカリーで君の好きなやつを買ってきたんだ。今、温めてくるから……」 「腹減ってない。食いたきゃ2人で食えば?」 ピシャリと遮る祥悟の顔は無表情で、声音にもキツい響きはない。自分を見上げる眼差しにも不機嫌な色はまったく滲んでいないが、おそらく祥悟は……怒っている。 当然だ。昨日、来なかったことも、彼の電話を無視し続けたことも、自分は彼に詫びていないのだから。 智也は神妙な顔になり、祥悟に真っ直ぐ向き直ると、深々と頭をさげた。 「ごめん、祥。昨日は連絡もせずに……申し訳なかった」 そのまま頭を下げ続けるが、祥悟から答えはない。ゆっくりと顔をあげると、椅子の背もたれに頬杖をつき、自分を見上げる祥悟と目が合った。その目が一瞬、寂しげに揺らめいて見えて、智也はドキッとした。
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