第1章 舞い降りた君

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祥悟は頬杖をついて、隣の智也を上目遣いにじーっと見ると 「ふうん……智也にはそう見えたんだ」 「うん。すごく自然だったな」 店員が、テーブルにコーヒーを置いていく。智也はカップを手に取るとひと口啜った。祥悟は納得のいかないような顔で、ずっと智也の横顔を見つめていた。 ……そんなに見ないでくれる?すごく緊張するんだけど。 上目遣いの真っ直ぐな視線が、突き刺さってきてどきどきする。 「祥悟くんはあの仕事、好きかい?」 智也の問いかけに、祥悟はちょっと目を丸くして 「好き?ん~~~わっかんねえ。言われたこと、やってるだけだし」 「そう。俺は君が仕事してる時の表情、すごくいいと思うな。いきいきしてる」 「ふぅん……」 祥悟は興味なさそうに相槌を打つと、背もたれに身体を預けて 「まあ、いろんな格好出来んのは楽しいかな。ヘアスタイルとかメイクとかさ、なんか別人みたいになれるじゃん?そういうの今までやったことなかったし。あと、美味いもんいろいろ食えるのもいいかも。……お、来たっ」 店員がトレーに乗せて運んできたパフェを見て、祥悟はぴょんと跳ねるように身を起こした。 智也もつられて目を向けて、テーブルに置かれたパフェの大きさに、思わずうわっと声を出した。 「デカイね。予想以上だ」 メニューの写真で想像していたよりかなり大きい。祥悟は目を輝かせながら、デザートスプーンを掴んで 「前に里沙とここ来た時、食べたんだ。あいつ、ダイエットとか言ってさ、ちょっとしか食わなかったけどね」 早速、上に乗っている生クリームと苺を、スプーンで器用に掬う祥悟の横顔を、智也はまじまじと見つめた。祥悟は蕩けるような顔で幸せそうに頬をゆるませている。 ……本当に好きなんだな、甘いものが。 さっき撮影現場で見せていた、透き通るような笑顔も綺麗だったが、今の無邪気な表情はちょっと反則だ。可愛すぎる。 普段のはすっぱな言動からは、これほどの甘いもの好きとは予測不可能だった。 祥悟はわくわくした様子で口を開きかけて、ちらっと智也を見る。 「智也も食ってよ」 カップル専用だから、スプーンは2つある。祥悟の目がテーブルに置かれたスプーンを早く取れと促している。 ……うわ。参ったな。これ、本当に俺も食べるのか……。
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