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「何かあってさ、来られねえの、仕方ないけどさ。電話1本は寄越せよな」
「祥」
「何かあったのか、とかさ、いろいろ考えちまうじゃん」
無表情に淡々とした口調で言われて、それがかえって酷く堪えた。智也は顔を歪め
「うん。そうだよね。本当に……すまなかった。電話するべきだったね」
祥悟は頬杖をやめて椅子から立ち上がると
「そーゆー辛気臭い面すんなっつーの。めんどくせえし。それより飯食えば?」
「あ……ああ。祥、君は本当に食べないのかい?」
リビングの方に行きかけた祥悟が振り返った。
「食ってやるよ。あっためてくれば?」
首を竦めて戻って来て、今度は瑞希の向かい側の椅子に腰をおろした。
「あ。ああ。待ってて」
智也がキッチンに向かおうとすると、瑞希が慌てて腰を浮かし
「あ、智くん。僕も何か手伝う」
「いいよ、瑞希くん、座ってて」
智也は瑞希に手を振ると、急いでキッチンに向かった。
オーブントースターで軽く焼いたクロワッサンと紅茶で、3人並んで遅い朝食を取る。
「おまえさ、今、高校生?」
「うん。今年卒業です」
「ふうん。大学進学すんの?」
「ううん。僕、他にやりたいことがあるから」
「やりたいこと? 何さ」
「え。内緒。恥ずかしいから」
最初は誰も口をきかず、気まずい沈黙が流れていたが、ふいに祥悟が瑞希に話しかけ始めた。人懐っこい瑞希が嬉しそうにそれに答え、その場の雰囲気が一気に和む。
祥悟はどうやら、初対面の瑞希が気に入ったらしい。基本的に他人には一切興味を示さない彼が、珍しく瑞希には次々と質問を投げかけている。
智也は2人のやり取りを黙って見守りながら、内心ほっと胸を撫で下ろしていた。
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