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やはり瑞希を連れてきてよかった。
祥悟がこんなに瑞希に興味津々になるとは、正直意外だったが、おそらくそれは瑞希の醸し出す素直で性格の良さそうな雰囲気のせいだろう。
祥悟は、自分と2人きりでいる時と変わらないリラックスした表情で、瑞希に時折ちょっかいをかけながらクロワッサンを頬張っている。
もし、自分ひとりで祥悟に対峙していたら、どうだったろう。
昨日のショックを引きずったままの自分と、自分に無視されて怒っている祥悟。
祥悟が不機嫌さを隠さずいつもの調子で突っかかってきたら、自分は感情を抑えきれずに祥悟にぶつけてしまっただろう。その先にあるのは不毛な言い争いだ。そうなったら、自分は祥悟に言わなくてもいいことを言ってしまう。せっかくこれまで、ひた隠しにしていた想いを、そんな形でぶちまけてしまったら、もう取り返しがつかなくなる。
何も知らない瑞希の存在が、間に入ってくれて、微妙な均衡が保たれているのだ。そのことがすごくありがたかった。
「ふうん。おまえ、その見てくれならモテるんじゃねーの?」
「ええ? いや、全っ然」
「嘘つけ。童顔だけどさ、それって母性本能くすぐるってやつだろ」
「あ。また童顔って言った。僕それ気にしてるって言ってるじゃないですか」
「ばーか。そういうコンプレックスこそがさ、自分の最大の武器なんだっての。むしろそれを前面に打ち出して開き直るんだよ」
「祥悟さん、それ、他人事だから簡単に言えるんですよね?」
「は? あったり前じゃん。俺はおまえじゃねーし?」
「ふふふ。酷いなぁ。祥悟さんのアドバイス、テキトー過ぎます」
くすくす笑う瑞希に、祥悟はテーブルに頬杖をつき、満足そうににやりと笑って
「テキトーが1番いいんだよ。悩んだって何も解決なんかしねーし? そんな暇あんならさ、楽しいことした方がマシじゃん。なんなら俺が女の口説き方、教えてやろうか?」
「や。いーです、それは。祥悟さんと同じこと、僕がやってもギャグにしかならないもん」
「なあおまえ、恋人とかいんの?」
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