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「んー。社長から呼び出しくらってんの。謹慎解くからさっさと事務所に来いってさ。あーあ。かったりぃ」
言いながらドアの方に歩き出す祥悟を、智也は追いかけた。
「行くって、今すぐかい? もうここから出て行くってことなのか」
祥悟はドアノブを掴んでガチャっと回し
「んー。まあな。智也、いろいろ面倒見てくれてありがと。すげえ……居心地よかったし、ここ。でもさ、そろそろ下界に戻んねーとな。迷惑かけて、ごめん」
「祥。待ってくれ。あ……じゃあ、着替えたら送って行くよ。事務所にいったん顔を出したら、何処かで食事でも」
祥悟はドアを勢いよく開け放つと、くるっとこちらを振り返った。
「や。ここからは1人で出て行く。ずっと匿ってもらってたのにさ、おまえに付き添われて事務所行くとか、超みっともねーし?」
そう言ってにかっと笑う祥悟の顔を、智也は探るように見つめた。嫌な言い方をして怒らせたかと思ったが、祥悟の表情にそんな色は見当たらない。
「祥……」
「ほんとに、おまえには世話になった。感謝してる」
祥悟はそう言って頭を下げると、ちょっと照れたようににやっと笑って、リビングを出て行った。
「ね、智くん。本当にあれでよかったの?」
瑞季と一緒にマンションの部屋に戻ると、智也は妙に脱力した気分で、荷物を放り出し、ソファーにどっかりと腰をおろした。
瑞季が隣にちょこんと腰をおろし、少し遠慮がちに下から顔を覗き込んでくる。
「ん? 何がだい? あれでよかったって……」
智也が首を傾げながら問うと、瑞季はちょっと目を泳がせてから、もう一度こちらをじっと見つめて
「智くん……あの人のこと……祥悟さんのこと、好き。でしょう?」
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