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智也は現実から目を逸らすように、瑞季の下腹へと手を伸ばした。
布越しに触れた瑞季のそこは、自分と同じように、昂って反応していた。時折微かに喘ぐ声にも、甘い艶が増している。
行きずりの男と違って、瑞季に対しては、もちろん好ましい気持ちはあるのだ。ただ、祥悟に対する狂おしいほどの想いとは、比べようもない。
「瑞季くん。ここ、触っても、いいかい?」
智也が囁くと、ぎゅっと瞑っていた瑞季の目がうっとりと見開かれた。潤んだその瞳に、自分のあさましい顔が映り込んでいる気がして、智也はすかさず視線をずらす。
「ん……智くん……さわって」
ため息のように囁き返す瑞季の声音の甘さに、また下腹にきゅんっと熱が溜まる。
男の身体は不本意だ。心を伴わない行為でも、性的に昂れば勃起もするし相手を抱ける。
……抱ける……? 本当に?
智也は布越しの膨らみを優しく指でなぞった。熱く息づく瑞季のそれは、自分の指に触れられると、まるで別の生き物のように、ひくりと震えた。気持ちいいのだと、同じ男としてすごくよく分かるから、瑞季の素直な反応は可愛いし愛しい。でも……
……祥じゃなくても、俺は男を抱けるのか……? 瑞季を抱くことが出来るのか?
ああ、もちろん。身体は、確かに興奮してる。瑞季の反応に、煽られてちゃんとその気になってる。
だったらこのまま……先に進めるのか? 祥じゃなくても?
だとしたら……俺のこの想いは一体なんだったのだろう。
祥の傍らで、想い悩み続けてきたあの日々は……。
深く考え始めてしまえば、また堂々巡りの暗い深淵に堕ちて行く。
智也は次々押し寄せてくる思考を振り払い、瑞季の熱をぎゅっと握り締めた。
「あ……っぁあ……っ」
瑞季が喘いでびくびく震え身を捩る。まだ少し柔らかかったそこが、更に膨らんで弾力を帯びて、こちらの指を押し返してくる。
ふと、瑞季から聞いた、亨という元恋人の話が頭をよぎった。
2年間付き合った高校の先輩で、今は都内の大学に通っているらしい。告白は向こうからされたが、瑞季自身も大好きだったという彼氏。蜜月の時期もあっただろうに、どうしてあれほど拗れてしまったのか。
その男は、瑞季をどんな風に抱いたのだろう。
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