硝子越しの想い2

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智也は腕を前に出して、自分の手のひらを見つめた。涙で揺らめくそれは、力なく幻の人を掴もうともがいている。 「祥。ダメだよ……。どうしても君を……忘れられない。頼むよ……祥……頼むからもうやめてくれ……」 智也は握り締めたこぶしを、壁に打ちつけた。 腹の奥から込み上げてくる慟哭は、もう抑えきれない。 「祥……俺が好きなのは君だ。抱きたいのは君だけなんだよ! 君しか……要らないんだ!あああ……っくそっ」 智也は叫びながら、壁をこぶしで叩き続けた。 リビングのドアを開けて中を覗き込むと、もうすっかり服を身につけてしまった瑞季が、こちらを振り返りソファーから立ち上がった。 「智くんっ」 智也はバツの悪さに、瑞季を真っ直ぐに見れず 「ごめん、瑞季くん。放ったらかしにして」 「ううん。智くん、大丈夫?」 「あ……ああ。何でもないよ。急に飛び出して、本当にごめんね」 おずおずとソファーに近づいていくと、瑞季はぱたぱたと駆け寄ってきて 「僕は全然、平気。それより智くん。誰かから電話だった? もしかして……祥悟さん?」 顔を下から覗き込んでくる瑞季の、無邪気な視線が痛い。智也は苦笑いをすると 「あー……。うん、いや。留守電だけどね」 「祥悟さん、何て? やっぱり来て欲しいって言ってきた?」 「え? ……いや、そうじゃないけど」 瑞季は不思議そうに首を傾げると 「じゃあ、呼び出されたわけじゃないんだ? ふーん……」 「うん。瑞季くん。それよりその、途中で……その……中断してしまって……申し訳ない。ただ俺は」 瑞季が不意に手を伸ばしてきた。びくっとする智也の手を取ると、にっこり笑って 「智くん謝りすぎ。僕、別に怒ってないし。それより……」 言いながら瑞季は伸び上がって、すぐ間近から顔を覗き込んできた。智也がドキッとして目を逸らすと 「智くん……泣いてた? 目が真っ赤だよ」
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