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「祥悟さんと、初めて会ったのっていつ?」
「4年前……かな? 俺が21で祥悟は……今の君と同じぐらい。双子の姉と一緒に撮影用の衣装を着ていてね、最初俺は彼を……女の子と間違えたんだ」
瑞季は目を見開いた。
「わ……。それ、祥悟さん、すっごく怒ったでしょ」
智也は苦笑して
「うん。怒ったね。あんた近眼?どこ見て言ってんの?俺は、お・と・こだ。……ってね」
瑞季はくすくす笑い出し
「あー……それ、なんか想像つくな。すっごい祥悟さんっぽい」
智也もつられてくすっと笑った。
「うん。彼らしいよね。祥悟はそう言って姉と顔を並べて……笑ったんだ。とても艶やかに華やかに。あの笑顔に……俺は捕まってしまった。初恋だったよ。もうずっと……囚われ続けているんだ。ずっとね」
「ふーん。初恋かぁ。ふふ。智くん、可愛い」
「はは。おかしいだろう? 君よりずっと歳上の俺が、こんな話なんて」
「全然おかしくなんか、ないよ」
瑞季はぶるぶると首を横に振って
「智くんの大切な想いなんだよね。話してくれて、僕は嬉しい。……ね、智くん。智くんは……その……自分がゲイだってこと、いつ自覚したの?」
「うーん……。祥悟に恋するまで、俺はわかってなかったかな。ずっと、自分は奥手だと思っていたからね」
「じゃあ、祥悟さんを好きになって、初めてわかったんだ?」
智也は頷いて、少し遠くを見つめた。
そう。自分がゲイだと自覚したのは、祥悟を好きになったからだ。双子の……瓜二つの姉の里沙ではなく、自分が心を鷲掴みにされたのは、弟の祥悟だった。
あれからもう4年。同じ事務所の先輩として、そして頼れる兄貴代わりとして、ゆるい距離を保ちながらも、祥悟の傍らに寄り添ってきた。
心に彼へのせつない思慕を秘めて。
「他の人、好きになったことはなかった?」
「ないな。いい加減しんどくてね、他に目を向けたいって思ったことはあったけど。でも……無理だったね」
ふふ……とため息混じりに笑うと、瑞季は首を可愛らしく傾げて
「祥悟さんに、打ち明けないの? 智くんの、気持ち。ひょっとして智くん、片想いって、思い込んでるだけで、ほんとは」
智也はすかさず首を横に振り
「言わないよ。告白はしない。だって祥は、ゲイじゃないから」
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