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かなり緊張しながら電話してみた瑞季の母親の反応は、意外にもあっさりとしたものだった。
こちらがいろいろと気を揉んで話すよりも先に「智くんの所だったら安心だわ。うちのバカ息子、悪いけど預かってもらえる? 次の休みはいつ? ああ、その日なら私も予定はないから、そっちにお邪魔するわ」
さばさばした男っぽい気性そのままに、さっさと話し合いの日程も決めてしまった。
電話を切った後、智也は拍子抜けした気分で瑞季の顔を見つめた。
「おばさん……。相変わらずだね」
瑞季は嫌そうに顔をくしゃっとさせて
「いっつもそうやって、人の話、全然聞かないんだ、母さん。ほんと……嫌になる」
「ふふ。でもとりあえず、今週末まで君はここに泊まるといいよ。その後のことは、おばさんに会ってから決めよう」
「……うん。智くん。ありがとう」
「本当にいいんだよ。俺はソファーで。お客さんの君を、ここで寝かせるわけにはいかないからね」
「でも智くん。僕1人であんな広い寝室とベッド……占領するのはやっぱり嫌だよ」
智也は渋る瑞希の背中を押しながら、寝室に向かった。
「はい、瑞希くん。もうこの話はおしまいだよ。君がここに一緒に住むようになるなら、奥の物置になってる部屋を片付けるからね。とりあえずそれまでは、君は寝室、俺はソファー」
瑞希はまだ納得がいかないのか、寝室のドアの前で立ち止まると、くるっと振り返った。ぷくっとふくらました頬は、風呂上がりでツヤツヤしていて、自分と瑞希の年齢差を改めて感じてしまう。
「なんだい? その顔」
「一緒にベッドで寝ればいいじゃん。智くんとこのベッド、結構広いし」
「ふふ。君もしつこいなぁ。さっき言っただろう? いくら広めでも、野郎2人で寝るのはキツイよ。さ、早く入って?」
瑞希はまだ膨れっ面のまま首を竦めると、渋々ドアを開けて室内に入った。
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