第1章 舞い降りた君

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「双子なんだね。同じ顔が並んでるからびっくりしたよ。どっちがお姉さん?」 「あ、はい。私の方です」 先に里沙と名乗った方の子が、手をあげて答えた。もう1人は口をきゅっと引き結んだまま、上目遣いに智也を見つめている。 ……妹の方は人見知り、なのかな。今日が初日って言ってたから、緊張してるのか。うわ。参ったな。俺、年下の子の扱い方なんて知らないけど。 智也自身、それほど社交性のあるタイプじゃない。家では3人兄弟の末っ子で、構うよりは構われる側だった。年下の、しかも女の子だなんて、どう接していいのか見当もつかない。 ……何か和ませるような言葉をかけてあげたいけど、思い浮かばないな。 智也は出来るだけ優しそうな笑顔を作って、椅子に座る少女の前で屈み込んだ。 「初めまして。君が妹さんか。名前、教えてくれる?」 無表情だった少女の片方の眉がきっと上がった。みるみるうちに不機嫌そうな顔になり、キツい目をして智也を睨みつけ 「あんた、近眼?どこ見て言ってんの?」 「っ!祥っ。ね、お願い、やめてよ」 驚いて固まっている智也の前で、少女は軽やかに立ち上がり、慌てて駆け寄ってくる里沙を逆にぐいっと抱き寄せて 「妹じゃねーし。俺はお・と・こ。名前は橘祥悟。真名瀬先輩、よろしくお願いしまーす」     
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