硝子越しの想い2

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……忘れられるのかな、俺は。こんなにも未練たらたらで。 祥悟の匂いに、本能的に自分と似た遺伝子を嗅ぎ分けていたのだろうか。彼を好きだと、愛おしくて堪らないと、自分の中の遺伝子が本能がざわめいていたのか。 ならば祥悟の方も、自分にあんな風に懐いてくれたのは、近い遺伝子同士が呼びあったからなのだろうか。 でも……。きっとそれだけじゃない。 本能的に嗅ぎ分けた相性以外に、彼に心惹かれる要素は嫌になるほどある。 それに……同性を恋しいと思う本能は、祥悟の遺伝子には組み込まれていないのだ。 自分とは違って。 ……ああ。もうやめだ。こんなこと、どれだけ考えたって堂々巡りだ。 自分にとって祥悟が、たとえ遺伝子レベルで愛おしい運命の人だとしても、祥悟にとっての自分は……そうじゃない。 「瑞希くん。君ね、ちょっと無防備過ぎるよ」 「へ……?」 きょとんとする瑞希に、智也は苦笑混じりのため息をついて 「君は、俺が同性愛者だってもう知っているよね。それなのに、こんな風に抱きついてきていいのかい? さっきは途中でやめたけど、また……その気になってしまうかもしれないよ?」 瑞希は丸い目を更に丸くして 「だって……智くんは僕を抱かないでしょ? その気になったりは、多分しないよね」 妙に確信めいた瑞希の言葉に、今度は智也の方が目を丸くした。 「それは……」 「このベッド、僕と智くんで寝ても全然平気なくらい広いよ。でも智くんが一緒に寝ないのは、僕に手を出しちゃうのが怖いからじゃないよね? 僕がその気になっても、智くんが応えたくないから……だから嫌なんでしょう?」 ズバリと言い切られて、智也は絶句した。 そんなことはないよと、すかざす反論しようと思っても、言葉が出てこない。 瑞希の言葉は図星だった。いや、そうハッキリと意識してこの子との同衾を避けていたわけではないが、今の言葉で自覚してしまった。
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