硝子越しの想い2

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「そうか……。その先生とは……?」 「先生ね、僕が3年にあがる前に転任しちゃったんだ。北海道に。もともと、あっちの人だったから。悲しかったけど、追いかけるなんて無理だもんね。僕まだ中学生だったし」 瑞希はそう言うと、こちらを見てにこっと笑った。その何の屈託もないように見える笑顔が、やけにせつなく感じて、胸が詰まる。 「高校になって、僕が写真やりたかったのはね、その先生の影響かな。先生、カメラが趣味だったから。そうして、亨くんと出逢ったんだ。僕、最初は亨くんのこと、ちょっと苦手だった。無口でぶっきらぼうで、すっごく取っ付きにくくて。部室に2人きりでいても、ほとんど話もしなかったし。話しかけても無視するし」 当時のことを思い出しているのか、瑞希はちょっと楽しげに頬をゆるめ 「だから、僕の方は好きっていうより、すっげぇやな奴~って感じだったんだよね。でもある事がきっかけで……好きになっちゃった」 そう言ってぺろっと舌を出し、照れくさそうに笑った。 智也は瑞希の肩を抱いて引き寄せた。 「あんなことがあっても……君はまだ、彼が好き、なんだね」 瑞希は一瞬、身体を強ばらせたが、すぐにくてっと力を抜いて 「うーん……。わかんない。すごく好きだけど、今は怖い、かな。会いたいか?って言われたら、会いたくない。僕のせいで亨くんがあんな風になっちゃったんなら……やっぱり怖くて会えないよ」 「そうか……」 智也は瑞希を抱き締めて、優しく何度も頭を撫でた。 互いに好きだった時期があったのに、ボタンの掛け違いですれ違ってしまった心。 自分とは状況が違うけれど、瑞希もまた、恋に苦しむ1人の男なのだ。 「ねえ、瑞希くん。俺はね、祥悟のことが苦しいくらい好きだ。でも……今後は彼と、ちょっと距離を置こうかと思ってるんだよ」
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