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瑞希は頭をこてんと肩に預けてきた。
「亨くんと、そういう関係になった時ね、僕、母さんに何回か……言おうとしたんだ。でもやっぱ、言えなかった。母さんをガッカリさせるってわかってたから。……智くんは……お母さんに、自分のこと、カミングアウトしてる?」
「いや。俺は誰にも言ってないよ。俺がそれを自覚したのは、もう家を出た後だったからね。それに……今さら自分からカミングアウトは……出来ないかな」
智也は自分の父母や兄たちの顔を思い浮かべた。彼らが、自分の性的指向のことを知ったら、どんな反応をするだろうか。父や母はおそらく驚くだろうが、家業に背を向け成人して独立している末っ子の自分に、何か格別の期待をかけているとも思えない。家を継いだ長兄とそのサポートをしている2番目の兄貴は、それぞれ妻子がいて家庭を築いている。兄貴たちも、知ったらかなり驚くだろうが、自分を蔑んだり距離を置いたりするような性格ではない。
だが、彼らには出来ることなら、知られたくはないな……と思う。
自分がまだ家にいた時も普通に仲の良い家族で、兄たちとは今でも機会があれば会って食事をしたり、年末年始には実家に顔を出している。だが、自分にとって彼らの存在は……ある種のコンプレックスなのだ。阻害されているわけでもないのに、智也自身が勝手にそう感じているだけなのだが……。
「僕も、出来れば母さんには、知られたくなかった。それもあんな嫌な形でなんて……酷いよ」
瑞希がぐすっと鼻をすする。
泣きたい気持ちはものすごくわかる。
自分もそんなことになったら、きっと瑞希以上に落ち込むだろう。
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